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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)2681号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人両名の上告趣意は末尾添附別紙記載の通りである。

論旨第一点に対する判断

被告人、原審相被告人岩本、同鷹松等が、共謀の上右岩本において判示窃盗を実行し、被告人においてその見張をした以上、右鷹松の所為及びその責任の如何にかかわらず、被告人においても判示窃盗について共同正犯の責を免れないことは、当裁判所の判例に徴し明白であり、論旨は理由がない。(昭和二二年(れ)第二三五号、昭和二三、三、一六第三小法廷判決、二巻三号二二〇頁)

同第二点に対する判断

原審の認定した事実によれば相被告人岩本幸信は被告人と共謀の上原判示の如く強盗に着手した後、家人に騒がれて逃走し、なお泥棒、泥棒と連呼追跡されて逃走中、警視庁巡査に発見され追付かれて将に逮捕されようとした際、逮捕を免れるため同巡査に数回切りつけ遂に死に至らしめたものである。されば右岩本の傷害致死行為は強盗の機会において為されたものといわなければならないのであって、強盗について共謀した共犯者等はその一人が強盗の機会において為した行為については他の共犯者も責任を負うべきものであること当裁判所の判例とする処である(昭和二四年(れ)第一一二号同年七月二日第二小法廷判決)それ故相被告人岩本の行為について被告人も責任を負わなければならないのであって論旨は理由がない。

同第三点に対する判断

論旨によれば、判示二個の強盗殺人罪が、併合罪の適用を受くべきこととなり却って被告人に不利益となるのであるから、適法な上告理由とはならない。

同第四点に対する判断

記録によれば、原審第三回公判調書は二通あり原審第四回公判においてはむしろ前者について証拠調をしたものと認められ、かつ、右調書中には原判決に引用してある太田祐次の供述記載があるから、これについて証拠調をしたことは明かである。されば原判決には所論の違法は存しない。

よって旧刑訴法四四六条に従って主文の如く判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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